【2024年最新】創業融資の金利はいくら?公庫と制度融資の比較

【2024年最新】創業融資の金利はいくら?公庫と制度融資の比較

監修者:渡部 豪(公認会計士)

KPMGあずさ監査法人で勤めたのち、ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)へ就任。
創業期の会社のデットファイナンス(融資)を複数支援した実績を持つ。
【主な支援実績】
融資額:最大5億円(コンサル会社)
創業融資額:最大6500万円(EC会社)

目次

公庫と制度融資の融資条件を診断してみる

創業融資研究所を運営する日本創業融資センターは、あなたの会社が公庫や制度融資からどのような条件で、いくらお金を借りられるのか無料で診断しています。

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【監修者の経験】
・公認会計士として5年以上にわたり融資支援
過去100件以上の融資支援を実行
・自身も借りる側の立場(財務責任者)の経験あり
財務責任者として累計15億円の融資に成功

2024年3月、日銀のゼロ金利政策が終わり、「金利ある世界へ」突入しました。

創業融資の金利も例外ではなく、公庫・制度融資ともに金利は上昇しています。

そこで、初めて創業融資を受ける方は、以下のような悩みを持っていないでしょうか。

「公庫の創業融資の利息は高いと聞いて不安」

「好条件で融資を受ける方法を知りたい」

実際、私も初めて創業融資を受ける際は、次のようなことを模索していました。

「創業期は少しでも経費を節約したい」

「金利が1%違うだけで数十万円のコスト差がある」

「一番有利な創業融資はどれか?」

事業融資は数千万~数億円単位と高額なため、1%でも金利が下がれば支払う利息は数十万円も変わってきます。

そのため融資を受ける際は、想定外の金利負担とならないよう相場を把握しておくことが大切です。

また創業融資を受ける際、、金利以外にもコストが発生するケースがあります。

そこでこの記事で、公庫と制度融資のそれぞれの金利・コストの違いや、お得な融資制度を解説しています

【2024年最新】公庫の創業融資の金利相場

2024年10月最新の創業融資の金利相場は、おおむね2%前後です。

とはいえ、各種条件によって、金利は前後するので詳しく解説します。

国民生活事業の金利【2024年10月最新】

国民生活事業は、小規模事業者・個人事業を対象に様々な融資制度を提供しており、創業融資の場合は大半が国民生活事業の管轄となります。

なお、他にも中小企業事業・農林水産事業といった部署があります。

公庫は金融政策や経済市況を受け、定期的に金利を変動させており、直近では2024年10月に金利改定がありました。

2024年10月現在における、国民生活事業の創業融資の金利は下記のとおりです。

融資制度内容金利
(無担保)
融資限度額・
最大返済期間
新規開業
資金
新たに事業を
始める方
または
事業開始後
税務申告を
2期終えて
いない方
【基準利率】
2.30%
~3.50%
~7,200万円
運転資金 10年(据置期間 5年)
設備資金 20年(据置期間 5年)
さらに
女性または35歳未満か
55歳以上の方で
新たに事業を
始める方
【特利A】
1.90%
~3.10%
もしくは
技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
【特利B】
1.65%
~2.85%
その他
政策的背景から金利優遇の対象となる事業
【特利C】
1.40%
~2.60%
【特利E】
0.90%
~2.10%
【特利J】
1.25%
~2.45%
【特利P】
2.10%
~2.90%
【特利Q】
1.90%
~2.40%
情報元:日本政策金融公庫「国民生活事業 新規開業資金」

創業融資の基準利率は2~3%前後ですが、条件を満たしていれば、金利の優遇があります。

例えば、女性または35歳未満、55歳以上の経営者を対象とした「女性、若者/シニア起業家支援資金」や、政策的背景があると、特別利率が適用されて金利が下がるのです。

また、不動産などの担保の設定の有無によっても基準利率が変動します。

公庫の融資制度ごとの金利の詳細や具体的な計算方法については、下記の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

公庫の創業融資の実績金利

創業融資研究所を運営する日本創業融資センターは、累計100社超の融資支援実績データベースを有しています。

そのデータベース上では、公庫の創業融資の実績金利の中央値はおおむね1.7%~2.5%の間となっています。

創業融資の基準利率は公表値ベースだと2.20%~3.50%となっていますが、実態は2%前後に落ち着くケースが大半のようです。

【公庫の創業融資の実績金利】
1.7~2.5%

情報元:日本創業融資センター支援実績

【比較】公庫と制度融資はどちらの金利がお得?

公庫と制度融資ではどちらの金利のほうがお得なのでしょうか。

都道府県と市区町村の制度融資と比較しつつ、解説します。

創業融資は公庫のほか都道府県・市区町村の制度融資も存在

創業融資を提供しているのは公庫だけではありません。

都道府県や市区町村も、信用保証協会という政府系信用機関を通じて創業融資を提供しています。

各制度の創業融資にメリット・デメリットがあり、金利面で最も好条件なのは市区町村の制度融資(融資斡旋)です。

実際に公庫と制度融資を比較した表が以下のとおりです。

【2024年最新】創業融資の制度一覧
日本政策金融公庫都道府県の
制度融資
市区町村の
融資斡旋
制度名新規開業資金創業融資
例:東京都中小
企業制度融資
創業支援融資
例:港区中小
企業融資制度
融資額~7,200万円~3,500万円~1,500万円
利率2.20%~3.50%1.70%~2.2%0.20%
返済
期間
【運転資金】
最長 10年
【設備資金】
最長 20年
【運転資金】
最長 7年
【設備資金】
最長 10年
最長 7年
据置
期間
5年1年1年
代表者
保証
不要必要な場合がある必要
担保不要不要【法人】
必要な場合あり
【個人】
不要
情報元:日本政策金融公庫「新規開業資金」東京都中小企業制度融資「創業融資」港区中小企業融資制度「創業支援融資」

市区町村の制度融資(融資斡旋)の金利はほぼゼロ

市区町村の制度融資(融資斡旋)を活用した場合、港区のケースでは、区が大半の金利を負担し、本人負担の金利はほぼゼロ(0.2%)になります。

本人負担率・区負担率の割合は、市区町村によって異なりますが、創業融資に力を入れている市区町村であれば、金利面では大幅なコスト削減が見込めます。

港区中小企業融資制度
制度名融資限度額・
最大返済期間
金利
創業支援融資~1,500万円
最長 7年
5年以内
1.50%

5年超
1.80%
うち区負担率5年以内
▲1.30%

5年超
▲1.60%
本人負担率0.20%
情報元:港区立産業振興センター「港区中小企業融資あっせん制度のご案内」

【注意】金利だけで融資を申し込んではいけない理由

ただし、金利が低いからという理由だけで、融資を申し込むのは注意が必要です。

なぜなら金利以外にも、融資にかかるコストが存在しているからです。

代表的なものは信用保証料です。

また、目に見えないコストとしては、代表者保証や審査期間なども存在します。

実際にそれらの融資にかかるコストを各融資制度で比較すると、以下のとおりです。

融資にかかるコスト
日本政策金融公庫都道府県の
制度融資
市区町村の
融資斡旋
制度名新規開業
資金
創業融資
例:東京都中小
企業制度融資
創業支援融資
例:港区中小
企業融資制度
利率2.20%~1.70%~0.20%
信用
保証料
なし0.27%~1.19%~
上記計2.20%~1.97%~0.45%~
代表者
保証
不要必要となる場合がある必要
審査期間~1ヵ月~2ヵ月2ヵ月
~3ヵ月
情報元:日本政策金融公庫「新規開業資金」東京都中小企業制度融資「創業融資」港区中小企業融資制度「創業支援融資」

信用保証料

都道府県や市区町村の制度融資を活用する場合、信用保証料というものが発生します。

信用保証料とは、融資をするにあたって、信用保証協会に保証人となってもらうための費用です。

信用保証料を決定するのは、政府系保証機関である信用保証協会となっています。

なお、東京都の創業融資の場合は、保証料の2/3を東京都が負担してくれます。

港区の創業融資の場合は、区の保証料負担はありません。

ただし、区と東京都の創業融資条件のいずれにも該当する場合は、区の利子補給と都の保証料補助を受けられるケースがあります。

創業融資の信用保証料
都道府県の
制度融資
市区町村の
融資斡旋
信用保証料0.27%~1.72%1.19%~1.49%
補助率2/3
本人負担率0.09%~0.57%1.19%~1.49%
情報元:東京信用保証協会「信用保証料」東京都中小企業制度融資「創業融資」港区立産業振興センター「信用保証料の補助についてのご案内」

代表者保証

公庫の新創業融資の最大の特徴は、代表者による連帯保証が不要な点です。

連帯保証とは、会社(法人)が万が一の際に連帯保証人である経営者(個人)が債務の支払い義務を負うことです。

通常の事業融資では代表者の連帯保証を求めるケースが大半で、金融機関による融資の約8割に経営者保証がついています。

特に創業期となると事業が立ち上がっていないため、金融機関としても連帯保証がないと貸付しにくいのが実情です。

情報元:中小企業庁「経営者保証の提供状況」

しかし、起業すること自体がリスクを大きくとるという点に加え、融資の際に連帯保証を負うとなると、仮に事業が失敗したときに経営者が再起不能に陥る可能性が高まります。

そこで、政府系の金融機関である公庫では、起業を増やすといった政策的背景から代表者保証を求めない融資制度である新規開業資金を提供しています。

極力リスクを抑えて起業をしたい方にとっては、代表者保証が不要な創業融資は、金利の数%といった差よりも大きなメリットとなるでしょう。

審査期間

審査にかかる期間や手間も、公庫と制度融資では異なります。

都道府県や市区町村の制度融資のデメリットは、民間金融機関の審査と信用保証協会の審査が二重で必要な点です。

制度融資では、各都道府県の信用保証協会が民間金融機関に対して保証を提供しています。

これによって、仮に事業者が返済困難に陥ったとしても民間金融機関は信用保証協会から融資金の全額を回収することが可能です。

民間金融機関にとってはリスクがない融資ではあるものの、しっかりと審査は行います。

また、保証を提供する信用保証協会も審査を行うことから二重の審査となり、審査期間は長期化しやすい傾向にあります。

公庫は単独で融資の意思決定ができるため、おおむね1ヵ月以内で審査が完了するのに対し、制度融資の場合の審査期間は2ヵ月程度です。

さらに、市区町村の融資斡旋を活用する場合は、各市区町村に対し事業計画書などを提示し斡旋書を取得することが必要となるため、+1~2週間程度かかります。

この斡旋書取得には、各市区町村が定める商工相談員への面談が必須なケースが多く、面談は事前予約が必要です。

さらに、複数回にわたる場合は取得に時間を要するため、融資実行までの期間が長期化する場合があります。

各創業融資制度の審査期間の違い
日本政策金融公庫都道府県の
制度融資
市区町村の
融資斡旋
融資制度新規開業
資金
創業融資
例:東京都中小
企業制度融資
創業支援融資
例:港区中小
企業融資制度
金融機関
審査
~1ヵ月~1ヵ月~1ヵ月
保証協会
審査
なし+1ヵ月+1ヵ月
斡旋書取得なしなし+2週間
審査期間~1ヵ月~2ヵ月2ヵ月
~3ヵ月
情報元:日本政策金融公庫「新規開業資金」東京都中小企業制度融資「創業融資」港区中小企業融資制度「創業支援融資」

創業融資の比較まとめ

創業融資のうちどの制度を選ぶべきかは、それぞれの会社や経営者の状況によって異なります。

以下を参考にして、ご自身の状況にあった融資制度を活用しましょう。

【時間をかけずに最短で融資を獲得し、経営者のリスクも抑えたい方】
公庫の新規開業資金
理由:審査期間が最も短く、代表者保証が不要

【時間がかかってもいいので、融資にかかる支出を極力抑えたい方】
市区町村の創業融資(融資斡旋)
理由:金利が最も安い

【時間もコストもかかるが、高額な融資を獲得したい方】
都道府県の創業融資
理由:金利や審査期間はかかるが、融資枠が3,500万円

公庫の創業融資の申し込み方法と審査の流れ

公庫の創業融資の申し込み方法と審査の流れをステップごとに解説します。

STEP
創業融資の要件の確認

公庫の創業融資を受けるにあたっては、自己資金要件や事業開始後2年以内などの期間要件が存在します。

まずはご自身の会社が創業融資を受けられる要件を満たしているかを確認しましょう。

公庫の創業融資の要件については、下記の記事をご覧ください。

STEP
必要書類の準備

公庫の創業融資を利用するにあたって、いくつかの書類を準備し提出する必要があります。

申し込み時に必要な書類については、下記の記事をご覧ください。

STEP
融資申し込み【窓口・WEB】

必要書類がすべてそろったら、提出(申し込み)を行います。

公庫のHPからインターネットで申し込みが便利です。

公庫の各支店窓口に直接行く方法もありますが、時間と手間がかかります。

STEP
審査担当者との面談【支店】

融資申込後、審査担当者から面談の案内があります。

面談は公庫の各支店で対面で行われ、約1時間程度、審査担当者との質疑応答を行います

面談の内容については、下記の記事をご覧ください。

STEP
融資決定・融資手続き【郵送】

融資結果は、審査担当者から電話で直接通知され、借入金額・金利などの融資条件が確定します。

融資の契約手続きは郵送で完結します。

公庫から送られてきた借用書に署名捺印を行って返送しましょう。

借用書の返送が完了後、指定口座に入金されるまで約5日程度です

公庫と制度融資を同時に利用することも可能

公庫の創業融資のみでは、立ち上げに必要な金額に届かない場合は、公庫の創業融資と都道府県や市区町村の制度融資は併用することが可能です。

実際、希望した融資額の満額の承認を得られるケースも多くないので、まとまった金額の融資を確実に受けたければ、1つの選択肢として考えられます。

なお、都道府県と市区町村の制度融資は保証元が信用保証協会と同じため、いずれか1つを選ぶ形となります。

【公庫の制度融資の併用】
公庫の新規開業資金+都道府県の制度融資
もしくは
公庫の新規開業資金+市区町村の融資斡旋

実際に公庫の新創業融資と東京都の制度融資を併用した際の事例をご紹介します。

このケースでは公庫で1,500万円、都道府県の制度融資で1,000万円の合計2,500万円の融資獲得となりました。

公庫の新創業融資と制度融資の併用の場合の例
日本政策金融公庫東京都の制度融資
活用制度新創業融資創業融資
例:東京都中小
企業制度融資
金利2.35%2.30%
保証料なし0.60%
所要期間3週間7週間
返済
期間
7年7年
融資額1,500万円1,000万円
合計2,500万円
情報元:日本創業融資センター事例

有利な条件で融資を獲得したい、そんなときは専門家のサポートを活用

事業融資は金額が大きく融資期間が長いため、金利や保証料が1%違うだけでも大きなコスト負担となります。

少しでも有利な条件で融資を獲得したい場合は、専門家に依頼をするのもよいでしょう。

【融資を支援する専門家の例】

・公認会計士
・税理士
・認定支援機関
・融資コンサルタント

また、公庫と制度融資の併用は、金融機関側と密なコミュニケーションやスケジュール調整が必要となり、難易度が高まります。

日本創業融資センターでは、公庫と制度融資を併用し、できるだけ多くの融資を獲得したいといったニーズにもお応えできます。

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