日本政策金融公庫の創業融資で知らないと恥をかく!必要書類と準備のポイント
監修者:渡部 豪(公認会計士)
KPMGあずさ監査法人で勤めたのち、ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)へ就任。
創業期の会社のデットファイナンス(融資)を複数支援した実績を持つ。
【主な支援実績】
融資額:最大5億円(コンサル会社)
創業融資額:最大6500万円(EC会社)
日本政策金融公庫の創業融資に申込みたいけれど、どの必要書類を準備すればよいか悩んでいないでしょうか。
公庫の創業融資の場合、申込み時に加えて面談時にも別途書類が必要です。
具体的には申込み時に最大6種類、面談時に最大8種類の最大計14種類の書類を準備すれば、基本的には問題ありません。
本記事では、日本政策金融公庫の創業融資の申込みに必要な書類を、記入例や見本を交えて紹介します。
過不足なく必要書類を揃えて、スムーズに手続きを進めてください。
日本政策金融公庫の「創業融資」申込時の必要書類6つ
公庫の創業融資に申込む際に必要な書類は、主に以下の6つです。
【創業融資の申込みに必要な書類】
・借入申込書
・創業計画書
・見積書 ※設備資金を申込みの場合
・許認可証、資格や免許を証明する書類
・代表者の本人確認書類
・履歴事項全部証明書
借入申込書や創業計画書は、記載内容を振り返られるように控えを取っておきましょう。
また、どうしても融資申込みに関してわからないことがあれば、以下の事業資金相談ダイヤルに連絡すれば答えてくれます。
借入申込書
まずは公庫に融資を申込むために必要な借入申込書を用意します。
なお、インターネット申込みをする場合は、借入申込書の提出は不要です。
【借入申込書】
情報元:日本政策金融公庫「借入申込書」
表面に自社の情報や申込み金額、借入希望日といった各種申込み内容を記載したうえで、裏面の同意事項を確認します。
公庫の公式サイトには、両面印刷もしくは2枚出力のうえ提出するように記載されているため、裏面も忘れずに提出しましょう。
なお、借入申込書への押印は不要です。
借入申込書の記入例は以下のとおりで、記入方法がわからなくなったら確認してください。
【借入申込書の記入例】
また、借入申込書の記入方法や注意点について説明している案内動画もあるので、不安な方は確認してみてください。
創業計画書
創業計画書は、新たに事業を始める方が必要な書類です。
創業計画書には、創業の動機や代表者の経歴、事業の見通しなどを記載します。
【創業計画書】
情報元:日本政策金融公庫「創業計画書」
また、公庫の公式サイトには、以下のように創業計画書の作成に役立つ参考資料が提示されています。
情報元:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード|国民生活事業」
業種ごとの創業に関するチェックポイントや創業事例集が載っているため、自社に合った参考資料があれば書類作成に役立つでしょう。
さらに、美容業やソフトウェア開発業といった業種ごとの創業計画書の記入例が公式サイトに提示されています。
そのため、自社の業種の記入例があれば、それを参考に書類を作成できます。
加えて、公式のセルフチェックリストが用意されているので、活用すれば内容の過不足なく創業計画書を作れるでしょう。
【創業計画書セルフチェックリスト】
見積書
見積書や工事請負契約書は、設備資金を申込む場合に必要な書類です。
なお、見積書に有効期限が設定されている場合は、期限内に提出しましょう。
【見積書の見本】
【工事請負契約書の見本】
設備資金は土地・建物や機械、車両、パソコンなどの事業に必要な設備を買うための資金のことです。
設備資金を借りる場合、融資金が設備資金以外に使われないか確かめるために見積書の提出を求められます。
そのため見積書や工事請負契約書は可能な限り早めに発行してもらうようにしましょう。
業者の発行が間に合わないと、申込み時に提出できなくなってしまう可能性があります。
もし申込み時に見積書の準備が間に合わない場合は、購入する設備の内容と金額を把握できるカタログやインターネットのページを印刷して準備しましょう。
ただし、融資額を増やしたいからといって、過大な見積もりを取得してはいけません。設備融資では実際の支払い後に余った金額は返金が必要となります。
許認可証・資格や免許を証明する書類
許認可や資格が必要な事業を行う場合は、許認可証や資格を持っていることがわかる書類が必要です。
【許認可証の見本】
許認可証の申請や取得には時間がかかるものがあるため、余裕をもって準備しておきましょう。
あらかじめ証書や資格の取得までにどのくらいの期間が必要か確認しておくと安心です。
なお、店舗が完成してからでないと営業許可がおりない飲食店や理美容業の場合、営業許可証は融資申込み後の提出でもよいケースがあります。
その場合は事前に公庫の担当者に相談しておきましょう。
ただし、理美容業や宅地建物取引業といった開業するのに資格が必要な業種では、申込み前までにあらかじめ免許を取得しておく必要があります。
代表者の本人確認書類
代表者の本人確認書類として、免許証やパスポートといった顔写真付きの本人確認書類を準備します。
【運転免許証の見本】
情報元:警察庁「運転免許の更新等運転免許に関する諸手続について」
免許証は両面コピー、パスポートは顔写真のあるページと現住所のページが必要です。
書類をコピーする際は、カラー・モノクロどちらでもかまいません。
また、免許証に記載されている有効期限が切れていないかも確認しておきましょう。
履歴事項全部証明書
法人の場合は、履歴事項全部証明書を準備しましょう。
履歴事項全部証明書とは、法務局に登記されている会社の情報を証明する書類のことです。
証明書には現在の会社の情報だけでなく、前住所や以前の役員など一定期間内に変更された情報も記載されています。
【履歴事項全部証明書の見本】
情報元:法務省「別紙登記事項証明書記載例1 現在事項全部証明書」
履歴事項全部証明書は原則として3ヵ月以内に取得したものを提出しましょう。
また、証明書を取得する際は「かんたん証明書請求」を利用するのがおすすめです。
「かんたん証明書請求」を使えば、法務局の窓口に行かなくても書類を取得できるうえ、窓口手数料(1通600円)より100円~120円ほど安く書類を取得できます。
なお本店住所や役員の選退任などの登記情報は、審査において重要な情報となるため、変更がった際はタイムリーに対応しましょう。
日本政策金融公庫の「創業融資」面談時の必要書類8つ
公庫の創業融資を受ける際、面談時には主に以下の8つの書類を準備します。
【創業融資の面談に必要な書類】
・預金通帳
・代表者の源泉徴収票または確定申告書
・借入の返済予定表
・不動産の賃貸借契約書
・売上の見通しがわかる書類
・事業計画書
・公共料金の領収書
・代表者の本人確認書類
面談の際、公庫担当者から書類内容について質問されたらすぐ答えられるよう、上記の書類に加えて申込み時に保管した書類も持参するのをおすすめします。
預金通帳
代表者の支払い履歴や自己資金の有無を確認されるため、事業用の預金通帳だけでなく個人の預金通帳も準備しましょう。
残高がある通帳はすべて持参しておくと、提出忘れがなくなって安心です。
【預金通帳の見本】
公庫の担当者は、通帳の明細から自己資金を継続して貯めてきているか、公共料金や税金の支払いが遅れていないかなどを確認します。
なお、直近6ヵ月分の明細が必要なため、面談前に通帳記帳を済ませておいて情報を最新のものにしておきましょう。
もし記帳を長期間していない場合は、記帳していなかった期間の明細がまとめて「一括」「おまとめ」などと記載されることがあります。
その場合は、金融機関の窓口で記帳されていない期間の明細を発行してもらうよう依頼しましょう。
また、ネットバンキングを使っている場合は取引明細を印刷して提出します。
その場でネットバンキングへのログインを求められる可能性があるため、ログインIDやパスワードを準備しておくと安心です。
なお、通帳のコピーではなく、原本を提示しましょう。
代表者の源泉徴収票または確定申告書
創業する前に会社員をしていた場合は直近2年分の源泉徴収票を、個人事業主もしくは会社員でも確定申告を行っていれば直近2年分の確定申告書を用意します。
【源泉徴収票の見本】
【確定申告書の見本】
情報元:国税庁「申告書の記載例」
確定申告書や源泉徴収票をなくした場合は再発行してもらいましょう。
確定申告書は税務署に、源泉徴収票は勤務先に依頼すれば再発行できます。
確定申告書の再発行には1ヵ月程度の時間を要する場合があるため、余裕をもって準備しておきましょう。
もし職場に再発行を依頼しにくい状況であれば、役所で取得できる課税証明書でも代用できます。
借入の返済予定表
住宅ローンやカーローンなどの借入がある場合は、以下のような返済予定表を提出します。
【返済予定表の見本】
法人ですでに借入がある場合も、返済予定表を準備しておきましょう。
もし返済予定表が見当たらない場合は、借入先に再発行してもらう必要があります。
返済予定表から毎月の返済額や返済期間を把握し、公庫が希望の融資額が多すぎないか判断します。
また、審査時に信用情報の調査があり、公庫は借入や返済の状況を正確に把握できるため、虚偽のないように申告しましょう。
カードローンや消費者金融の借入があると審査に不利になる可能性があるので、申込み前にできれば完済しておきましょう。
不動産の賃貸借契約書
事業を行うために店舗や事務所を借りる場合は、賃貸借契約書を準備します。
【賃貸借契約書の見本】
情報元:大阪府「賃貸借契約書(例)」
もし融資申込み時に契約を締結していない場合は、「賃貸借予約契約書」か「物件の説明書」を提出しましょう。
賃貸借予約契約書は不動産会社に発行依頼し、物件の説明書はネットから入手するか不動産会社に用意してもらいます。
また、賃貸物件である自宅で開業する方も賃貸借契約書が必要です。
飲食店や理美容業などは店舗の立地が経営に影響するため、正確な場所がまだ決まっていなくても、ある程度の地域を決めて説明できるようにしておきましょう。
なお、賃貸ではなく不動産を所有している場合は、直近の固定資産税の領収書が必要です。
売上の見通しがわかる書類
契約書や見積書、商談情報といった売上の見通しがわかる以下のような書類を準備しておきましょう。
【業務委託契約書の見本】
情報元:厚生労働省「Ⅲ-契約書の参考例」
上記のような契約書があれば、一定期間内の売上が予想できます。
そして、売上から経費を差し引けば、返済原資をどれくらい確保できるのかを把握することが可能です。
極端なことをいえば、完済するまでの期間すべてに売上が発生する契約書がすでにあれば、返済原資は確保できており、十分に返済能力があると判断されやすくなります。
そのため、売上の契約書や見積書は今後の売上を高い確度で証明できる資料として、確実に準備しておきたい書類です。
事業計画書
事業計画書には収支や返済の計画を記載し、事業の現況や課題、今後に向けた行動目標を確認します。
その内容の具体性や再現性をみて、公庫は融資判断の材料にします。
以下が事業計画書の記入例です。
【事業計画書の記入例】
情報元:日本政策金融公庫「事業計画書(中小企業経営力強化関連用)記入例」
上記の事業計画書は一例で、書式に決まりはありません。
ただし、記載する内容はある程度統一されていて、現在の課題や売上目標達成のための具体的な行動計画などを、文面で説明できる計画書であることが理想です。
例えば、売りたい商品を「誰に」「どのように提供するか」や、競合他社・市場規模の現況、自社の強み・弱みなどが計画書に記載する具体的な内容として挙げられます。
公共料金の領収書
公共料金の領収書は、正常に支払いを継続できるかどうかをチェックするために必要です。
【公共料金領収書の見本】
情報元:東京ガス「払込書の見方(ガスと電気セットでご契約のお客さま向け)」
もし公共料金の支払いが遅れていると、資金管理能力に疑念を持たれて融資を断られる可能性があります。
公庫が調査する信用情報では、公共料金の支払い状況は把握できないため提示を求められるケースがある書類です。
代表者の本人確認書類(原本)
申込み時に準備した代表者の本人確認書類は、面談時にも必要です。
申込み時に提出したものと同じ顔写真付きの運転免許証やパスポートの原本を準備して持っていきましょう。
創業融資の書類準備が面倒、そんなあなたに
本記事では日本政策金融公庫の創業融資の申込み時と面談時に必要な書類を、記入例や見本を交えて紹介しました。
必要書類は合わせて15種類ほどとはいえ、借入申込書や創業計画書といった審査結果を左右する重要書類を、事業で忙しい経営者が1人ですべて準備するのはなかなか困難でしょう。
そこで、必要書類の準備が面倒と感じる方は日本創業融資センターの融資支援サービスを活用してみてはいかがでしょうか。
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