創業融資の返済期間は最長何年?据置期間と金利の目安についても解説

創業融資の返済期間は最長何年?据置期間と金利の目安についても解説

監修者:渡部豪(公認会計士・CFO)

渡部豪公認会計士事務所代表 兼 ベンチャー企業CFO(財務責任者)

公認会計士として、これまで130社超の創業期の会社に対し融資支援の実績有。(創業融資での最大成功額 6,500万円)

また自身もベンチャー企業のCFOとして累計7億円の融資調達に成功。

目次

創業融資の返済期間の考え方

創業融資を検討される方のなかには、返済負担を極力抑えたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。

毎月の返済負担を抑えるための方法の一つとして、返済期間を可能な限り長く設定することがあげられます。

では、返済期間は最長でどれくらいとれるのでしょうか?
また返済期間を長くとることや、元金据置をすることにデメリットはあるのでしょうか?

創業融資の返済期間について解説します。

融資制度によって返済期間は異なる

まず、返済期間は融資制度によって異なります。

日本政策金融公庫の新創業融資(通称:創業融資)に関しては、運転資金で最長7年、設備資金で最長20年の返済期間が定められています。

プロパー融資(民間金融機関の通常の融資)であれば、運転資金では長くて5年、設備資金では10年程度であるのに比べ、創業融資は比較的長い返済期間となっています。

また、「据置期間」という元金返済を保留し、金利のみを支払い、返済開始を遅らせることができる期間が最長2年認められているのも、創業融資の特徴です。

創業融資は、無担保・無保証(担保・保証人が不要)といった点に加え、返済期間の面においても起業を支援する制度内容となっています。

融資の返済期間
創業融資
(日本政策金融公庫)
プロパー融資
(民間金融機関)
運転資金最長 7年最長 5年
設備資金最長 20年最長 10年
据置期間最長 2年なし
情報元:日本政策金融公庫 国民生活事業「新規開業資金」

創業融資の返済期間は審査でどのように決まるか

創業融資の制度上の返済期間は運転資金で最長7年、設備資金で最長20年と定められているものの、必ずしも最長の返済期間が約束されるわけではありません。

創業融資の返済期間は、申込人の希望や資金の使途、審査の状況に応じて変わってきます。

申込人の希望

創業融資の返済期間が決まる要素として、申込人の希望も加味されます。

申込人の返済期間の希望は、「借入申込書」という申し込み用紙に記載します。

【ご希望の返済期間】
据置期間を含む、トータルの返済期間の希望を記入

【元金据置】
元金据置を希望する場合は、据置期間を記入(2.令和〇年〇月まで希望)

日本政策金融公庫「借入申込書

運転資金か設備資金かによって決まる

次に、運転資金か設備資金かでも返済期間は異なります。

借入申込書へ記載する【ご希望の返済期間】は、資金使途に応じて記入しましょう。

運転資金の返済期間は最長で7年となっています。

【運転資金】
商品、材料仕入れ
買掛、手形決済
諸経費支払い
(人件費、家賃、その他経費)

設備資金の返済期間は、最長20年となっています。

【設備資金】
店舗、工場
機械設備
土地、車両、他
(固定資産計上の対象となるもの)

審査担当者による判断

創業融資の返済期間は、必ずしも申込人の希望が通るわけではありません。

制度上の最長期間が獲得できるケースもあれば、融資審査の結果、希望するより短い返済期間となるケースもあります

創業融資の返済期間
運転資金設備資金
制度上の上限最長 7年
(据置:最長2年)
最長 20年
(据置:最長2年)
一般的なレンジ3年~7年
(据置:0~2年)
7年~20年
(据置:0~2年)

日本創業融資センターの支援実績データベース(創業融資 累計100件超)における、創業融資の返済期間の一般的なレンジは上記のとおりです。

日本政策金融公庫の商売は金利ビジネスのため、高い金利で長期間融資する事ができれば儲かるわけですが、一方で返済期間は長ければ長いほど貸し倒れ(回収不能)のリスクは高まります。

返済期間を長期でとるほど事業の安定性がない、と判断された場合、制度上は最長7年の返済期間となっていても、適正な返済期間は3年(据置0年)といった審査判断が下る場合もあります。

適切な返済期間の決め方

創業融資を検討される方にとっては、返済期間は長く設定したほうが、毎月の返済負担は楽になります。
一方で、返済期間が長いことにはデメリットも存在します。

ここでは、適切な返済期間の決め方について解説していきます。

返済期間が長いことによるメリット・デメリット

返済期間が長いことによる最大のメリットは、毎月の返済負担が少なく済み、経営が楽になる点です。

一方でデメリットとしては、長期間の借入を行うことにより金利総額が高くつく点です。

また金融機関側の立場として、返済期間が長くなると貸倒リスクは高まるため、融資額や金利など融資条件は保守的になります

【メリット】
毎月の返済負担が少なく済む

【デメリット】
金利総額が高くなる
融資条件(融資額・金利)が保守的になる

返済期間が短いことによるメリット・デメリット

返済期間が短いことによるメリットは、金利総額を低く抑えることができる点です。

また、金融機関側の立場としては長期間貸し出すよりは貸倒リスクが下がることから、有利な融資条件を出しやすいでしょう。

一方でデメリットとしては、毎月の返済負担が重い点です。資金ショートしないよう余裕をもった資金計画を立てる必要があります。

【メリット】
金利総額は低くなる
融資条件(融資額・金利)を高めに出しやすい

【デメリット】
毎月の返済負担が重い

据置によるメリット・デメリット

据置期間とは、元金の返済を保留し金利のみの支払いで済む期間の事をいいます。

とくに創業期の不安定な見通しの中、申込人は据置を活用することで、据置期間中は返済負担をほぼゼロにすることができます。

一方でデメリットとしては、据置期間中は返済実績が積めないことにより、追加融資を希望する場合は難しくなる可能性がある点です。

据置は事業が軌道に乗るまでの間はとくに利用したいですが、将来的な資金調達の計画も考慮したうえで決める必要があります。

【メリット】
毎月の返済負担がほぼ無い(金利のみ)

【デメリット】
追加融資の審査上はマイナス
(返済実績が積めない・借入金残高が減っていない)

返済負担をシミュレーションしてみる

返済負担は、返済期間と金利で決まる

毎月の返済負担は、返済期間のほかに金利も左右します。

創業融資の金利の目安は、日本創業融資センターの融資支援実績データベース(100件超)によると、概ね2%前後となっています。

【公庫の創業融資の実績利率】
1.7~2.5%

情報元:日本創業融資センター支援実績

創業融資の金利に関しては、以下の記事に詳細をまとめていますので参考にしてみてください。

仮に創業融資の金利を2%と仮定した場合の、融資額と返済期間ごとの返済額(毎月)の計算結果は以下のとおりです。

とくに返済期間は毎月の返済負担に大きく影響しますので、無理のない返済計画を立てましょう。


【前提:金利2%、据置なし、元金均等返済】

融資額・返済期間ごとの返済額(毎月)
返済期間500万円800万円1,000万円2,000万円
3年145,959円
うち利息 7,060円
233,518円
うち利息 11,296円
291,898円
うち利息 14,120円
583,796円
うち利息 28,240円
5年90,902円
うち利息 7,569円
145,444円
うち利息 12,111円
181,805円
うち利息 15,138円
363,611円
うち利息 30,277円
7年67,311円
うち利息 7,787円
107,698円
うち利息 12,460円
134,623円
うち利息 15,575円
269,246円
うち利息 31,150円
10年49,618円
うち利息 7,951円
79,388円
うち利息 12,722円
99,236円
うち利息 15,902円
198,472円
うち利息 31,805円
20年28,975円
うち利息 3,142円
46,361円
うち利息 13,277円
57,951円
うち利息 16,284円
115,902円
うち利息 32,569円

返済シミュレーション

日本政策金融公庫は、毎月の返済額のシミュレーションを提供しています。

希望する借入額に対し、融資条件(返済期間・金利)を入力することで毎年の支払額がシミュレーションできます。

【返済方法】
事業資金の融資の場合、基本的には元金均等返済かつ毎月返済となります。

【返済期間】
トータルの借入期間と、うち据置を希望する場合は元金据置期間を入力します。
返済期間5年うち1年の据置を希望する場合、返済期間5年0ヵ月、元金据置期間として12ヵ月を記載

【金利】
初回の金利から変動することは基本的にはありませんので、「初回から」に金利を入力します。
コロナ融資など1年目の金利と2年目以降の金利が異なる場合は、「〇年目から」の欄にも2年目以降の金利を入力します。

希望する借入額に対し、融資条件(返済期間・金利)を入力することで毎年の支払額がシミュレーションできます。
日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション

創業融資を有利な条件で獲得するには

これまでご説明したとおり、創業融資の返済期間や金利は審査結果によって変動します。

公庫側がリスクが低いと判断できる場合、融資額、返済期間や金利などの融資条件については好条件が引き出せる可能性が高まります。

そのためには、借入申込書や創業計画書などに、実績を根拠とした合理性のある成長ストーリーや、細かな収支シミュレーションを示す必要があります。

慣れない方ですと少し難しいと思われるかもしれませんが、このような金融機関向けの資料作成は、専門家のサポートを受けて進めることもできます。

なかには無料相談を受け付けているような専門家もいますので、問い合わせをしてみましょう。

創業融資をサポートしてくれる専門家

・税理士
・公認会計士
・認定支援機関

日本創業融資センターでは、経験豊富な担当者が創業融資の成功をサポートします

創業融資の準備は簡単ではありません。手間や時間もかかります。

日本創業融資センターでは、公認会計士やCFO経験者が、創業融資の成功をサポートします。

また、日本創業融資センター(経産省の認定支援機関)を通じた創業融資の場合、中小企業経営力強化資金といった融資制度が活用できます。
この融資制度では、基準利率よりも▲0.4~0.6%程度低い金利が適用されます。


創業融資を検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。

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