あなたは公庫(国金)から借りられるか?審査に落ちる理由や実際の融資の流れ
監修者:渡部 豪(公認会計士)
KPMGあずさ監査法人で勤めたのち、ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)へ就任。
創業期の会社のデットファイナンス(融資)を複数支援した実績を持つ。
【主な支援実績】
融資額:最大5億円(コンサル会社)
創業融資額:最大6500万円(EC会社)
日本政策金融公庫(国金)でいくら借りられるのか診断してみる
公庫(国金)からお金を借りたいと考えているが、自分がお金を借りられるのか?不安に思われる方も多いでしょう。
審査に落ちてしまう人の特徴や審査落ちの理由を知ることは、事業リスクを下げるために非常に重要です。本記事では公庫の審査難易度や、審査落ちする人の特徴などを詳しく解説をしていきます。
また創業融資研究所を運営する日本創業融資センターは、あなたの会社が公庫でお金を借りられるのかを無料で診断しています。
簡単にご利用いただけますので、是非ご活用下さい。
▼いくら借りられるのか知りたい方▼
公庫(国金)からの借入を成功させたい
監修者は公認会計士として、5年以上にわたり融資支援を行っており、過去100件以上の融資支援を行っています。
また、自身も借りる側の立場(CFO)として、設立5年以内の会社で、累計7億円の融資調達に成功しています。
はじめて公庫の融資を検討する方のよくある悩みとして、
「自分は本当に借入ができるのか不安」
「借入ができそうなのであれば申し込みしたい」
「公庫からお金の借りる方法や手順を知りたい」
といった点があると思います。
私もいちばん最初に公庫の融資を検討した際、
「そもそも自分の会社にお金を貸してくれるのか?」
と、とても気になっていました
せかっく手間と時間をかけて融資を進めるのであればしっかりした準備を行い必ず成功させたい。
しかし、もし借入の可能性が低いのであれば、そこまで期待しないほうがいいかな・・・とも思っていました。
自分は融資を受けられるのか、また受けられない可能性があるのであればその原因に対して対策方法はあるのか。
そのようなことを調べてみても、当時は情報が少なかったように記憶しています。
この記事を読めば、あなたが公庫(国金)からお金を借りられるのか?また融資の審査を受けるにあたって気を付けるべき点が明確になります。
先に結論ですが
・公庫(国金)の借入の成功率は50%
・融資に成功した人の結果への満足度40%
・審査落ちTOP3「信用情報・自己資金・事業計画」
・融資の流れは、申し込み・審査・手続きの3プロセス
日本政策金融公庫(旧称:国金)はお金を貸してくれるのか?
日本政策金融公庫が国金と呼ばれる由来
日本政策金融公庫(略称:公庫、旧称:国金)は、事業創出や地域発展、セーフティーネット機能拡充などを金融インフラとして支える政府系の金融機関です。
なぜ「国金(読み方:こっきん)」と呼ばれているかというと、それは「国民金融公庫」の略称だからです。
発足当初の1949年は「国民金融公庫」として誕生し、その後1999年には「国民生活金融公庫」へ名称変更していますが、いずれも「国金」という略称で親しまれてきました。
2008年からは「日本政策金融公庫」へ名前を変えたため、2023年現在においては「公庫」と略されることが多いですが、昔の呼び方である「国金」もまだ使われています。
公庫(国金)は、創業したばかりの会社に対し開業資金などの創業融資を行ったり、中小企業や小規模事業者など経済的立場の弱い会社に対する支援、近年では新型コロナウイルスや震災などの緊急時における融資を行うことで、経済を下支えしています。
公庫の融資制度
公庫は公的な金融機関として、様々な公的融資制度を提供しています。
「新創業融資」はとくに有名で、通常であればお金を借りることができない創業期の会社へ保証人なしで融資を行っています。
そのほかにも、民間の銀行からのプロパー融資やカードローンなどと比較すると金利が低かったり、借入期間が長かったりと、公庫の融資制度は起業家にとってはメリットが大きい制度ばかりです。
日本政策金融公庫の創業融資 | ||
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制度名 | 対象者 | 融資条件 |
新創業融資 | 設立後2期未満 かつ 自己資金1/10超 | 限度額:最大 3,000万円 期間:最長20年 金利:2.33%~ 無担保・無保証 |
新規開業資金 | 事業開始後 おおむね7年以内 | 限度額:最大 7,200万円 期間:最長 20年 金利:2.03%~ |
女性、若者/ シニア 起業家支援資金 | 事業開始後 おおむね7年以内 かつ 女性または 35歳未満か 55歳以上 | 限度額:同上 期間:同上 金利:1.68%~ |
中小企業経営力 強化資金 | 事業開始後 おおむね7年以内 かつ 中小会計を 適用する方で 認定支援機関の 指導を受けている | 限度額:同上 期間:同上 金利:1.68%~ |
再挑戦支援資金 | 事業開始後 おおむね7年以内かつ 廃業歴等を 有する方 | 限度額:最大 7,200万円 期間:最長 20年 金利:2.03%~ |
公庫の審査は甘くない、むしろ厳しい
公庫の審査通過率は50%
一説によると、創業融資の場合、全体の申込みのうち審査に通過する率は50%と言われてます。
公庫が審査の通過率に関する情報を公開しているわけではありませんので真偽は定かではないですが、公庫が公開している創業融資の実績は年間26,000件(令和3年度)となっています。
一方で日本国内の新設法人数は年間150,000社(東京商工リサーチ「2021年度 新設法人数」)となっており、仮に新設法人のうち1/3である50,000社が創業融資に申し込んだと仮定しても、成功率50%という数値はおかしなものではありません。
公庫はその成り立ちから審査が甘いのではと勘違いされがちですが、半分は審査落ちすると考えるとむしろ厳しいと言えるでしょう。
【日本政策金融公庫 創業融資の実績(令和3年度)】
融資額 1,406億円(件数 26,000件)
情報元:日本政策金融公庫 ニュースリリース「令和3年度 創業融資実績」
公庫の審査通過した人も、希望通りの結果でなかった割合は約40%
さらに、審査に通過した人も希望通りの結果であったという人ばかりではありません。
公庫が融資を実施した企業に対するアンケートでは、現在苦労していることとして「資金繰り・資金調達」をあげた方の割合が35.9%もありました。
これは裏を返せば、「公庫の融資を受けてもなお十分な資金調達ができていない」と考える人が全体の約40%存在するといった見方もできます。このように、公庫から希望通りの満額融資を受けることは簡単ではないのです。
【日本政策金融公庫 新規開業実態調査(2022年度)】
アンケート結果:現在苦労していること「資金繰り・資金調達(35.9%)」
情報元:日本政策金融公庫 新規開業に関する調査「2022年度新規開業実態調査」
公庫の審査に落ちる理由をわかりやすく解説
監修者が100件超の融資支援を行ってきたなかで、一度公庫の審査に落ちてしまったため、専門家の支援を活用し再チャレンジしたいというご相談も数多く寄せられます。
実際に審査に落ちてしまった人の話を聞くなかで、審査落ちしててしまう人の傾向がみえてきています。審査落ちの原因TOP3は「信用情報・自己資金・事業計画」に問題がある場合が多いです。
ここでは、審査落ちの理由について説明していきます。
審査落ちの原因一覧
審査落ちの原因として主なものをまとめてみました。
これらは重要な審査項目として、融資担当者が審査で重点的にチェックしている点でもあり、一つでもあてはまるものがあると、審査ではマイナスの評価となるため大きなリスクといえます。
自身があてはまっているものがないか、確認をしてみましょう。
審査上マイナス評価されるもの
【信用情報】
・クレジットカードの支払い遅延(直近5年)
・自己破産や債務整理をした(直近10年)
・ブラックリスト入りしている
・税金や社会保険料の滞納(直近2年)
・家賃や公共料金の遅延(直近1年)
・消費者金融・カードローンを借りている
【自己資金】
・要件(創業資金総額の10分の1)に満たない
・自分自身で貯めたものでない
・一時的な見せ金であった
【事業計画】
・事業計画の用意がない
・事業計画を適当に作った
・夢物語のような事業計画を作成している
・融資金の使い道が明確でない
(運転資金・設備資金として、何にいくら)
【その他】
・公庫で借りられない業種である
(金融業、不動産業、風俗業など一部業種)
・融資を借り換えに使おうと考えている
(消費者金融・カードローン)
・融資を事業資金以外に充てようと考えている
(生活費・遊興費など)
・許認可の取得ができていない
(クリニック、飲食店、不動産仲介等)
・経験の浅い事業で借り入れしようとする
・代表者の年収が少ない(未成年・無職など)
・会社の私物化が目立つ
(高級車・接待交際費・役員貸付金)
▼公庫の融資審査に落ちたくない方▼
審査落ち原因への対策と、審査で評価されやすいケース
これらの審査落ち原因のなかでご自身にあてはまるものがあれば、対策を行わないと審査落ちする可能性が高まります。
それぞれの審査落ち原因と、それに対する対策方法の詳細は別の記事で徹底解説していますので参考にしてみてください。
一方で、審査上プラスに評価される有利なものあります。
監修者がご支援させていただいた経営者の方のなかにも、自己資金を借入希望額の10倍以上お持ちであり、また信用情報もホワイト、事業計画もしっかり作り込んで挑まれたケースで、実際に希望額満額の融資が降りています。
また、事業開始後から既に相当の売上が出ており、実績からみて事業計画の達成に納得感がある場合も満額の承認が降りています。
審査上プラス評価されるもの
【信用情報】
・金融事故歴が一切ない(滞納・遅延)
・借入金が少ない(住宅ローンのみ)
【自己資金】
・借入希望額の100%以上の自己資金を保有
【事業計画】
・事業計画が保守的に作成されている
・売上計画が達成可能な根拠がある
・既に相当の売上の実績が出ている
【その他】
・代表者の成功体験のある領域で起業
(目安:同業での経験が3年以上)
公庫の融資を受けるための流れ
公庫の審査に落ちる原因と対策がわかったら、実際に融資の申込みを行います。
個人で公庫の融資を受けるための流れは以下のとおりです。
おもに「申し込み」「審査」「手続き」の3ステップとなります。スムーズにいけば最短で1ヵ月程度で融資結果が出ます。
ただし、審査上の論点が多い場合は、2ヵ月以上かかるケースもありますので、余裕をもって申し込みをしましょう。
公庫の融資は3ステップ
必要書類を準備し、融資の申込みを行います。
新創業融資の場合は、創業の動機や経営者の略歴、事業の見通しなどを記入する「創業計画書」や、中長期の収支の見通しを示す「事業計画書」などの書類作成をする必要があります。
必要書類がすべて揃ったら、申し込みを行います。
全国にある公庫の各支店窓口に直接行ってもいいですし、公庫のHPからインターネットで申し込みをする事もできます。
それぞれ、「借入申込書」という申し込みフォーマットに、借り入れを希望する金額など必要事項を記入し申し込みを行います。
【約1~2週間後】
融資申し込み後、融資担当者から電話で面談の案内に関する連絡があります。
面談は平日に公庫の各支店で対面で行われ、約1時間程度、融資担当者との質疑応答を行います。
融資担当者は、事前の提出書類と面談の内容を踏まえて、いくら融資がきるか慎重に判断します。
【約2~3週間後】
融資の申し込みと融資担当者との面談が終われば、あとは審査結果の通知を待つのみです。
早ければ面談から1週間程度で融資決定がおり、融資額や金利・返済期間など貸付条件が確定します。
借用書(融資契約書)が自宅に郵送されてくるため、契約手続きを行います。
融資契約の締結後、指定の口座に振り込みがなされます。
融資金の入金後は、指定した口座から毎月の返済が行われます。
公庫(国金)からの借入の成功率をあげたい
公庫(国金)の融資において、審査落ちする原因を紹介してきました。
しかしながら、ご自身が審査落ち原因にあてはまってしまっていても、しっかりと対策をすれば融資を受けられる可能性があります。
「自社がいくら借りられるのか」「審査落ち原因にあてはまっていないか」「具体的にどのような対策が必要なのか」などを知りたい人は、日本創業融資センターの無料相談をご利用ください。融資成功に向けてサポートします。