マル経融資のメリット・デメリットは?|最短着金する裏技も解説
監修者:渡部 豪(公認会計士)
KPMGあずさ監査法人で勤めたのち、ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)へ就任。
創業期の会社のデットファイナンス(融資)を複数支援した実績を持つ。
【主な支援実績】
融資額:最大5億円(コンサル会社)
創業融資額:最大6500万円(EC会社)
経営資金の調達を検討する際、多くの事業者が選択肢として考えるのが「マル経融資」です。
しかし、メリットやデメリットを理解せずに利用すると、予期せぬリスクや問題を抱えることもあります。
本記事では、マル経融資のメリットとデメリットについて説明し、最短で資金を受け取るための裏技も解説します。
中小企業経営者や起業家にとって、資金調達のプロセスをスムーズに進めるための参考にしてください。
マル経融資とは?
マル経融資とは、日本政策金融公庫が提供する融資制度の一つで、正式には「小規模事業者経営改善資金」と呼ばれています。
小規模事業者を対象とし、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度です。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の概要 | |
---|---|
項目 | 説明 |
申請対象 | 商工会議所から経営指導を受けた小規模事業者、かつ推薦を受けた方 |
融資限度額 | 2,000万円 |
返済期間 (据置期間) | 運転資金:7年以内(1年以内) 設備資金:10年以内(2年以内) |
利率(年) | 1.2%(特別利率F) |
担保・保証人 | 無担保・無保証人 |
マル経融資のメリット
【マル経融資のメリット】
・無担保無保証で最大2000万円まで借入可能
・特別利率(1.2%)適用で低金利
無担保無保証で最大2,000万円まで借入可能
マル経融資は、無担保・無保証で最大2,000万円までの借入が可能です。
通常、大きな金額を借り入れる際には担保や保証人が必要となりますが、マル経融資ではその必要がありません。
近年は代表者の保証を求めない流れが出てきておりますが、特に創業期の会社への融資では未だに保証や担保を求める融資が多いのも実情です。
そのなかで、マル経融資の「無担保・無保証」は大きなメリットといえるでしょう。
特別利率(1.2%)適用で低金利
マル経融資では、特別利率が適用されるため低金利での融資が可能です。
例えば、新創業融資制度の基準利率は、2.4~3.6%ですが、マル経融資の特別利率は、1.2%(2023年12月1日時点)で、他の融資制度と比較しても低い利率となっています。
低金利での融資は、返済の負担を軽減し、事業の持続可能性を高めるため、非常に有利な条件と言えるでしょう。
マル経融資のデメリット
【マル経融資のデメリット】
・経営指導の手間と時間がかかる
・商工会議所の会費がかかる
・融資の対象条件が厳しい
・創業融資では利用できない
経営指導の手間と時間がかかる
マル経融資のデメリットの一つは、商工会議所での経営指導を受ける必要があることです。
融資を受けるための条件となっており、通常は原則として6ヶ月間の経営指導を受けることが求められます。
事業者にとって手間と時間がかかるため、すぐに融資を受けたい場合には不利な条件になるでしょう。
借入を行うメリットは事業成長を加速させることに他なりません。
そう考えると、6ヶ月間もの経営指導を受けないといけないマル経融資は、スピードの観点では大きなデメリットが存在します。
ただし、例外的に6ヶ月間の経営指導期間を省略できる場合もあります。
詳しくは、本記事で後述している「マル経融資の申し込み手順>STEP3: 経営指導を受ける」で解説します。
商工会議所の会費がかかる
マル経融資を利用するためには、商工会議所の会員である必要があります。
商工会議所の会員になるためには、申込みと会費の支払いが必要です。
例えば、東京商工会議所の場合は、入会金3,000円と年間数万円の会費が発生します。
商工会議所の会費例(法人会員) | ||
---|---|---|
資本金(出資額) | 口数 | 年会費 |
500万円未満 | 1 | 15,000円 |
500万円以上 | 2 | 30,000円 |
1,000万円以上 | 3 | 45,000円 |
3,000万円以上 | 4 | 60,000円 |
融資の対象条件が厳しい
マル経融資は、融資が受けられる対象条件が厳しめです。
商工会議所からの経営指導のほか、従業員数や商工会議所区内での事業実績が1年以上など、さまざまな条件を満たす必要があります。
【マル経融資を利用できる条件】
・常時使用する従業員が20人以下の法人・個人事業主の方
(宿泊業および娯楽業を除く商業・サービス業は5人)
・最近1年以上、商工会議所地区内で事業を行っている方
・商工会議所の経営・金融に関する指導を原則6ヵ月以上受けており、事業改善に取り組んでいる方
・税金(所得税、法人税、事業税、都道府県民税等)を完納している方
・日本政策金融公庫の非対象業種等に属していない業種の事業を営んでいる方
参考:マル経融資(小規模事業者経営改善資金貸付制度)の概要|東京商工会議所HP
特に設立間もない企業や小規模事業者にとっては高いハードルとなる場合があるでしょう。
創業融資では利用できない
マル経融資は、同一会議所の地区内で直近1年以上の事業を行っていることが融資対象の条件です。
そのため、事業を始めて1年未満の方や、これから新たに事業を始める事業者向けの創業融資には適用されません。
創業段階で資金調達の選択肢を探している事業者にとっては、デメリットと言えます。
マル経融資の申し込み手順
マル経融資の申し込みは、まず地域の商工会議所での相談から始まります。
例えば、東京都に事業を構える企業の場合は、東京商工会議所に相談することになります。
ここでの相談は、融資の可能性を探るための重要な初期段階です。
マル経融資の申請準備に必要な情報を得られる機会となります。
事業計画や財務状況、融資の必要性などについて詳細な情報を伝えて、商工会議所の担当者と共に融資の適用可能性を検討します。
また、必要な書類の準備や申請手順の詳細についても、この段階で説明を受けます。
事前相談の結果、商工会議所が推薦できそうと判断された場合は、必要書類をメールで提出します。
申請書類は、法人と個人事業主で異なりますが、一般的に以下のような書類が必要となります。
法人の申込書類 | |
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書類名 | 内容 |
事業概要申込書 | 法人名、事業内容、 融資の目的などを記載 |
事業計画書 | 事業の目標、戦略、 財務予測などを記載 |
決算書 確定申告書 | 前期と前々期分 |
残高試算表 | 決算後6ヶ月以上経過の場合は直近分 |
領収書 または 納税証明書 | 法人税・事業税・法人住民税 |
商業登記簿謄本 | 法人の登記情報を示す公的書類 |
見積書 ・カタログ等 | 設備資金を申込む場合に必要 |
個人事業主の申込書類 | |
---|---|
書類名 | 内容 |
申込書 | 法人名、事業内容、 融資の目的などを記載 |
事業計画書 | 事業の目標、戦略、 財務予測などを記載 |
確定申告書 | 最近の税務申告書 |
決算書 | 前年と前々年分 (収支内訳書でも可) |
領収書 または 納税証明書 | 所得税・事業税・住民税 |
住民票 | 個人事業主の住所を証明する書類 |
見積書 ・カタログ等 | 設備資金を申込む場合に必要 |
また、この他にも必要に応じて追加書類の提出を求められる場合もあります。
次に、商工会議所による経営指導を受けます。
例えば、港区に事業所を構える事業者の場合、東京商工会議所港支部への問い合わせが必要になります。
マル経融資について東京商工会議所 港支部へ問い合わせたところ、以下の情報を伝えられました。
【商工会議所から確認された内容】
・確定申告が2期終わっているか
・正社員の人数(パートは除く)
・事業所の住所
・融資資金の使途
・直近年度の売上
・メールアドレスなどの連絡先
東京商工会議所の担当者によると、いくつか注意点もあるようです。
【マル経融資の注意点】
・必ずしも希望融資額が通るわけではない
・無担保・無保証のため審査は厳しい
・公庫の既存借入がある場合、上限枠に加味
まず、融資額は商工会議所で審査し推薦額が決められるため、必ずしも希望額が通るわけではありません。
無担保・無保証のため審査は厳しく、運転資金融資の場合、商工会議所の推薦額の上限は月商の1-2ヶ月分が限度のようです。
また、公庫の既存借入がある場合、それが上限枠に加味されます。
経営指導は、経営指導員(小規模事業者への経営指導を専門に行う商工会議所職員)が事業所を訪問し、原則として6ヶ月間面談が実施されます。
ただし、例外として経営指導期間を短縮する制度があります。
事業の預金通帳を6ヶ月分確認し、経営指導の必要性を精査することで経営指導期間を短縮することが可能です。
売上の実績や債務返済状況がしっかりとしているか確認し、経営指導・営業実態の確認をしたものとみなす制度です。
この制度は、港区だけではなく、東京23区であればどこでも利用可能です。
経営指導を受けた後に、商工会議所による審査と推薦が行われます。
経営指導に関しては、前述の例外的な方法として預金通帳の確認を利用すれば、通常6ヶ月かかる経営指導期間を大幅に短縮し、約1ヶ月程度で完了することが可能です。
事業の入出金状況を通じて経営の健全性が評価されると、より迅速に融資プロセスを進められます。
商工会議所からの推薦を受けた後、日本政策金融公庫への正式な申し込みと審査が行われます。
公庫による審査期間は、約1ヶ月程度を要します。
提出された書類や事業計画、財務状況、事業の持続可能性や返済能力などを詳細に検討し、融資の可否が決定されます。
商工会議所の推薦を受けたからといって、日本政策金融公庫の融資が必ず受けられるわけではない点は注意が必要です。
日本政策金融公庫の審査を通過した後、融資が決定されます。
融資決定後は、融資契約の締結が行われ、融資額が指定の金融機関の口座へ振りこまれます。
契約書には、融資条件、返済スケジュール、利率など全ての条件が明記されているため、契約内容を十分に確認しましょう。
マル経融資を受けられるか知りたい
マル経融資を検討している事業者で、融資を受けられるかどうか知りたい場合は、日本創業融資センターへご相談ください。
マル経融資は、一般的な金融機関の融資と比較して要件や手続きが複雑であり、特に経営指導の例外適用(6ヵ月期間の短縮)など、知っておいた方が得をする情報が他にもいくつか存在します。
日本創業融資センターは、経産省に認定された支援機関で、これまで100件以上のマル経融資を含む公庫の融資支援実績があります。
融資を熟知している実績豊富な公認会計士やCFO経験者が対応しますので、創業融資の成功率は98%と非常に高いことが強みです。
融資の全プロセスをサポートし、事業計画書作成から融資申請書類作成、融資制度の選定支援、審査面談の対策まで一括してサポートしております。
加えて、完全成功報酬制度を採用しており、融資が決まるまで費用は一切いただきません。
無料相談も受けつけておりますので、マル経融資に関する不安や疑問がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。